転職を成功させるには、自分の人生設計を再確認し、それに合った歯科医院を探すことです。転職先の候補がいくつかに絞られたら、その歯科医院をよく知ることが大切です。
そして、転職先を決定した後は、退職する医院に失礼がないように、社会人としてきちんと対応することが求められます。ここで、歯科医師の就職活動に重要となるポイントについて、あらためて考えてみましょう。
ポイント① 人生設計を考える
まず、自分の人生設計について考えてみましょう。ライフビジョンと言い換えてもいいかもしれません。皆さんはどのようなビジョンをお持ちでしょうか?
例)
「40歳で独立して医院を開業する」……(開業の目標)
「インプラントなどの技術を高める」……(技術の向上)
「結婚して子育てをしながら働きたい」……(生活に合わせた勤務形態)
「大病院の院長になり、医療に新風を」……(出世の目標)
「高額収入を得るプラチナ医師になる」……(スキルアップと金銭的な目標)
「世の中のために技術を活かしたい」……(医療・社会貢献)
いかがでしょうか。上記のように人それぞれにビジョンがあり、それぞれに適した人生設計があるはずです。
これを強く意識することで、自分の選択するべき道が見えることでしょう。
30年以上にわたって活躍している五十代のベテラン開業医は「今の歯科医療の現状をきちんと把握して、人生設計を再確認することが大切ですよ」とアドバイスしてくれました。
ポイント② 転職先の情報を集める
さて、人生設計を再確認した次は、転職先の情報を集める作業になります。
インターネットの歯科医師転職サイト、大学の先輩、友人、知人、歯科医師専門メディア、エージェントなど情報収集にはたくさんの方法があります。
とはいえ、地方の情報は少ないので地方での職場を探す場合は、地元の歯科医師会などに問い合わせてみましょう。
情報を十分に集めた後は、自分の人生設計に合った転職先を絞り込みます。
ポイント③ 足を使って調査
実はこの後の取り組みが最も重要です。それは、「自らの足を使って調べること」です。絞り込んだ歯科医院や病院の募集要項、パンフレット、ホームページなどに、あなたの知りたい情報がすべて掲載されているとは限りません。これらは、いわば「募集する側からの一方的な情報」であり、自分が本当に知りたい情報は、自らの足を使って慎重に調べる必要があるのです。
「歯科医院の院長の人柄や力量」、「経営方針」、「来院患者の傾向」などは、事前に自身の目で確かめるのが一番です。もし、知人が転職希望先に努めているのであれば、話を聞くことができますし、信ぴょう性も高いでしょう。
ただ、そうしたケースは稀ですので事前に見学に行くことをお勧めします。
ポイント④良い歯科医院を見分ける
ベテラン歯科医師の話によると、綿密な経営方針を立て、成功を収めている歯科医院にはいくつかの共通する傾向があるといいます。それは、次の通りです。
☆清潔であること
院内が清潔であることは、スタッフの配慮が隅々まで行き届いており、感染症対策はもちろん、患者を迎える体制、気構えなどがしっかりとできている証となります。
☆自由診療の料金などを患者にわかりやすく明示している
特に高額の治療費になる場合は、患者の不安が大きくなりがちです。そのため、診療料金を明示し、ハッキリと伝えることは、患者の立場に立った運営をしていることにつながります。
☆スタッフが明るく、心からの笑顔を見せている
かなり重要視していい項目です。スタッフの笑顔は、経営者が十分な給与や待遇(社会保険や有休など)を充実させることで、スタッフを大事にしていることが推測できるからです。
これらが揃った病院は「良い歯科医院」と判断でき、あなたの転職希望先の上位にランクされるでしょう。
ここまでに紹介した①~④のポイントを参考にして、ぜひ、自分の人生設計に合った転職先を見つけてください。
ベテラン歯科医師からのアドバイス
「過剰な歯科医師」「コンビニより多い歯科医院」などさまざまな記事が近年、週刊誌などを騒がせていましたが「決して歯科医師が多いわけではありません」とベテラン歯科医師は指摘します。
一方で、歯科学生が国家試験合格後に研修や就職先を自由に選ぶことができるマッチング制度が導入されて以降、歯科医師の卵が都会に集中していることも確かです。
歯科医師会によると、少子高齢化社会の到来で歯科医療の中身も変化しています。かつての「削る」「詰める」という医療から予防や口腔管理を中心に治療を行う歯科医院が増えているのに加え、審美、矯正、小児専門の歯科医院が登場するなど差別化も進んでいるそうです。
前出のベテラン歯科医師は「医院間の競争は激しいものですが、医科診療の新たな時代の到来を確信し、さらなる歯科界の発展の予感を感じています。転職を考えている人たち、特に若い世代の医師にはこうした歯科医療の現状を十分理解した上で人生設計を再確認してほしいと」と強調していました。
職場に迷惑をかけない円満退職を
さて転職が決まったからといって、すぐに現在働いている職場を退職できるわけではありません。民法の規定(第627条)では、雇用は解約の申し入れ日から2週間を経過すると終了するとされています。しかし、報酬を定める期間など雇用条件によって異なるほか、就業規則で1か月前や2か月前となっているところもありますから、就業規則をしっかりと確認してください。
経営者にとって、働き手が一人いなくなることは大きな痛手です。仕事や患者の引継ぎをしっかりするなど、職場に迷惑をかけないよう円満退職を心がけてください。