院長が歯科衛生士に期待する人柄とは?

%e2%91%ad%ef%bc%91_107966912-min
例えば、ある歯科医院で治療中だとします。歯科医の院長が患者さんに麻酔をかけています。初めての麻酔なので、患者さんは結構緊張しています。そんな時、歯科衛生士が「ちょっと緊張していますね。鼻から息を吸って、リラックスしてください」と患者さんに話しかけました。

こんな時、麻酔中の院長は、どう思うでしょうか?

A「患者さんに勝手に話しかけたりして、この歯科衛生士はダメですね」
B「機転が利く歯科衛生士だね」

院長は会社の社長と同じ

歯科医院の院長は、会社だと社長に当たります。大きな会社では、社長が社員一人ひとりと一緒に仕事をすることはありません。ですので、社員が社長の顔色をうかがったり、「何を考えているのだろう」と思いをはせたりすることはあまりありません。決められた仕事を上手にこなし、会社に利益が入るよう考えればいいのです。

しかし、歯科医院の場合、院長1人と歯科衛生士1人というケースも少なくありません。このような医院では連日、院長と歯科衛生士が顔を突き合わせて一緒に仕事をすることになります。会社に置き換えると、社長と毎日一緒に仕事をしているようなものです。これは、歯科衛生士にとって相当なストレスになるかもしれません。

実は、院長も同じです。ひとりしかいない歯科衛生士に気を遣い、歯科衛生士が不機嫌にならないよう、苦手な「親父ギャグ」を連発する院長もいるでしょう。それ以外にも、待遇面を充実させたり、スキルアップのための研修期間を設けたりする医院もあるかもしれません。

特に歯科衛生士は、現在、引く手あまたの状態だといいます。そのせいか、自分と合わないと感じたら歯科医院を辞めてしまう歯科衛生士もいるといわれています。せっかく実務を積ませたのに、わずかな期間で辞められてしまっては歯科医院は困ってしまいます。

さて、最初の質問の答えですが、皆さんはA、Bのどちらだと思いましたか?

答えは、どちらも正解です。多くは2の「機転が利く歯科衛生士だね」と思うでしょう。しかし、「今の時間は、治療に専念したい」と考える院長ですと「横から口を挟んで邪魔だなあ」と思うかもしれません。院長の性格によって答えがAになったり、Bになったりします。

歯科衛生士を採用する場合の基準について、ある歯科医院の院長は「歯科衛生士との相性が重要」と話しています。歯科衛生士が良かれと思ってしたことでも、相性が悪いと逆効果になってしまう場合もあります。その場合、先の質問の答えA「患者さんに勝手に話しかけたりして、この歯科衛生士はダメですね」となりかねません。日常の仕事をスムーズに進めるためにも相性の良し悪しを基準にする院長は多いのです。

「やる気」を示すことが大切

また、歯科衛生士に「やる気」を期待する院長はたくさんいます。ところが、「うちの歯科衛生士は、どこに何が置いてあるのかも把握していない。仕事をする気があるのか、ないのか。」と嘆く歯科医師がいることも事実です。

歯科衛生士の方も、特に新卒の場合では、まだまだ技術に不安があるため、テキパキと動くことは難しいでしょう。それが何日も続くと、歯科医師から「やる気がないのでは」と思われてしまうこともあるかもしれません。

そんな時、自分が「なぜ歯科衛生士の道を選んだのか」をもう一度よく考えてみることが大切です。

治療を受けた患者さんの喜ぶ顔が見たくてこの道を選んだのではありませんか?
虫歯が直した子どもから「ありがとう」と言われたくて歯科衛生士になったのではないですか?
歯周病で悩む人達の手助けになれば、と考えて歯科衛生士になったのではないですか?

「やる気」は気持ちです。漫画のように背中にスイッチが付いていて、それを押すと「やる気」が出てくる。――みたいな具体的な方法があればいいのですが、現実は、そう上手くはいきません。何もないところからは「やる気」は出ないものです。

まず、できることをやってみましょう。これまで習ったことのおさらいをして、足りない技術は何かをはっきりさせる。自分に足りない技術を理解したら、それを勉強する方法を考えます。教科書を読むのか、セミナーに出るのか、とにかくスキルアップを考えるのです。そういう日々の積み重ねを続けている人は、周囲から見れば「やる気がある人」と映るのです。

これは歯科医院の良し悪しにも関わってきます。常にスキルアップを考えているような歯科衛生士がいる医院は、ある種の活気があります。現在、歯科医院の仕事は歯の治療だけではありません。歯周病にならないようにするプラークの管理や、歯の磨き方の指導など、予防の仕事も多くを占めています。プラーク管理や歯磨き指導などは、まさに歯科衛生士が行わなければならない大切な仕事です。

多くの歯科医師も歯科衛生士に敬意を払い、仕事を任そうとしているのです。そういう意味で、歯科衛生士は社会から、また院長から求められている大切な人材なのです。ここまで言われたら、どうですか。「やる気」がでてきませんか?

患者さんとの接し方を上手に

%e2%91%ad%ef%bc%92_318362639-min

歯科衛生士には、院長との相性と「やる気」の二つが求められているのがわかりました。さらにもう一つ。「うちに入った歯科衛生士はやめたことがないですよ」という院長に「どんな人を選んでいるのですか」と聞いてみました。歯科衛生士の多くは女性です。結婚を機に医院を辞めるケースや、出産の後、子育てに専念するために仕事を辞める歯科衛生士はたくさんいます。そんな中「うちでは子育てが一段落して、また働く時間ができた歯科衛生士を採用しているのです」と院長は言います。彼女らのどこがいいのでしょうか?

「子育てをして、さまざまなことを経験したのです。そういう人が歯科衛生士だったら、細かなことに気がつくじゃないですか。世間話もできるし、何より慌てることが少ないのです」。確かに、新卒の右も左もわからない歯科衛生士を採用するより、確かに経験豊かな彼女らを採用した方が効率はいいのかもしれません。

しかし、ただ、経験を積めばいい、ということでもなさそうです。「やっぱり、患者さんと、ちゃんと話ができる、という人柄が一番。新卒でも、話し上手な歯科衛生士は大歓迎です」と院長は語ります。

歯科医院にとって大切なものは、歯科医の腕だけではありません。実際、技術力の高い歯科医が開業しても、簡単には患者さんは集まりません。技術の他に信頼や安心、安らぎなどが必要となるのです。その意味でも歯科衛生士の役割はとても重要です。無表情の医師に診てもらうより、愛想の良いニコニコしている医師に診てもらった方がいいですよね。たとえ医師が無表情だとしても、歯科衛生士が明るく、いつも笑顔の人だったら「痛そうな治療も我慢しよう」となりませんか。

さらに、治療に対するに不安な気持ちを話すことのできる歯科衛生士、歯磨きの相談にのってくれる歯科衛生士がいたら、人柄に惹かれてその歯科医院のリピーターになる患者さんは多くなるに違いありません。

人の話を素直に聞く

歯科衛生士には一定のスキルも求められます。ただ、こちらは「やる気」さえあれば、歯科医院に入ってからでも遅くはありません。先の院長も「うちでは研修やセミナー参加に力を入れているので、やる気さえあれば技術は後からついてきます」と話しています。

歯科衛生士の条件として、「指先が器用」を上げられることがあります。確かに不器用より器用な方がいいに決まっています。ただ、指先の不器用な人が、器用にはなかなかなれません。その代わり、別の方法があります。

それは「人の話を素直に聞く」ということです。歯科医や先輩の歯科衛生士は実際の治療の現場でさまざまな体験をし、揉まれてきています。その先輩や歯科医のアドバイスを素直に聞いて自分の仕事に生かすことができるかどうか。これが手先の器用・不器用よりも大切で、歯科院長も「期待する人柄」に「素直さ」を上げているほどです。

歯科衛生士になった直後は未熟だったとしても、人の助言を素直に聞く耳さえあれば、技術はメキメキ上達します。最初は先輩の真似からスタート。素直でないと、人の真似をするのだって「自分のスタイルとは違う」とか「結局、真似でしょ」とやらないで済ませてしまい、結局、技術は向上しません。オリジナルが重要な絵画や音楽でも、勉強を始めたばかりは、上手な人の真似からスタートします。素直な心さえあれば、知識や技術は、乾いた砂に水が染み込むように身に着いてくるのです。

今、コミュニケーション能力とやる気、そして素直な人柄を持った歯科衛生士を院長は求めています。さて、皆さんは、その求めに応えられていますか?


この記事の筆者:デントプレス

デントプレス編集部です。歯科業界に従事する方の就職活動を応援するサイト「デントプレス」を運営しています。歯科のお仕事にまつわる有益な情報を提供していきます。