【プロが指南!労使トラブルのアレコレ】-労働契約にみる労使関係

【この記事を書いた人】
プロ・ステ-タス社会保険労務士/国際行政書士事務所
代表 五十嵐 博幸(Igarashi Hiroyuki)
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労働契約にみる労使関係

どんな条件下で働くのか、これはいつの時代も働く人にとって最も重要なことです。
歯科医院に勤めることになった場合でも、様々な条件は全て使用者と労働者の関係、つまり労使関係の上に成り立っています。そこには、一定のルールが存在し、予めそのルールを知っておく事で悪戯にトラブルを引き起こしたり、巻き込まれたりしないで済むことにも繋がります。では、そのルールとは?
働くことで給料をもらうという関係は、全て契約によって決められているものです。この契約を結ぶ際の決まり事を定めているのが、労働契約法という法律です。そしてこの労働契約法には5つの原則が存在しています。

労働契約法 第3条
労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。
―これは一般に、雇う側の会社の方が立場的に強いので、ここで敢えて社員になる人と対等な立場で合意又は条件変更しなさいと言っています。主に雇用主側に対する契約の際の労働者への配慮を促すメッセージです。
●2項
労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
―これは、業務内容、責任、給料など総合的にみてバランスの良いものにしなさい。極端にどこかの条件が悪いとか、他の従業員と比べて、それぞれ平等な内容となっていないであるとか、平等であっても劣悪な条件項目は無いか?或いは一歩踏み込んだ解釈をすれば、成果を適正評価する仕組みを構築し実行力のある運用を行って下さいというメッセージが含まれていると考える事も出来ます。
●3項
労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
―これは、いわゆるワークライフバランスなど、例えば長時間労働を放置しないとか、育児や介護をしている従業員へ必要な配慮をしなさいというものです。どんなに給料を高く設定しても、労働者の心身の健康を蝕むような働かせ方をするような契約を禁じる趣旨です。
●4項
社員と会社は労働契約を遵守して、権利の行使、義務の履行は信義に添って誠実に行われること。
―これは、当然と言えば当然ですが、権利の行使や義務の履行は、互いに相手の信頼や期待を裏切らないように誠実に行わなければならないとする法理で信義誠実の原則といいます。単なる注意喚起の意味だけではなく、実際に労使間の問題が生じた際に、この原則に違反している態度や行為を指摘するなど、お互いの正当な権利・利益を守るための主張を行うことも可能となる、最も根本的で最も重要な規定と言えるでしょう。
●5項
労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。
―労働契約には様々な権利が内包されていますので、その権利を主張したり、行使をすること自体は、正当な目的で行われ、且つ合理的なものであれば問題とはなりません。但し、仮に、これまで説明してきた第1項から4項までを無視して、強引に権利行使すれば、相手方が極端に不利益を被る場合もあり得ます。これでは本来のあるべき労使関係の姿とは言えません。権利行使に関しては、一定の限度がありそれを逸脱すると権利の濫用として無効ですよということです。裁判の判例などでよく使われる表現で個別の事案ごとに注意深く判断がされるものです。

又、原則とは別にトラブルを防止する観点からいくつか紹介します。

労働契約法 第4条
●1項
使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする。
―労働条件の相違は、働き始めてから大きな問題となってしまいます。歯科医院では、医院ごとに様々な条件が定められており、勘違いが起きやすい状況にあると言えます。この条件説明はあったけれども、自分の理解とは違っていた。もっと○○でいいのかと思っていた、等というトラブルが後を絶えません。ですから、労働契約の内容を理解するだけでは足りず「理解を深める」と表現されているように、お互いが細部に渡って、よく確認し合う等の注意が必要です。
●2項
労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。
―労働基準法でも労働条件の明示は書面で行うことが義務とされています。これは「言った言わない」のトラブルを生じさせない為の規定です。

労働契約法 第6条
労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。
―これは、本来労働契約は口頭の合意で成立することを明確にしています。書面による明示義務は飽くまでも明示方法に関するもので、成立自体は口頭のみでも効力を発揮するといものです。ですから、その場しのぎや場当たり的な、恣意的対応で口にした約束でも契約の効力が発生することがあります。労働契約に際し求職者の知識・認識不足から、安易な会話や発言によって、医院側が合意したと勘違いしてしまい、後々トラブルに発展するケースも多く、契約時の発言等、やり取りは特に注意すべき点です。

次回のアレコレは「就業規則を確認しよう!」と題して、お送りいたします。


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この記事の筆者:デントプレス

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