【プロが指南!労使トラブルのアレコレ】-定額残業代制(みなし残業代)とは?

定額残業代制(みなし残業代)とは?

【この記事を書いた人】
プロ・ステ-タス社会保険労務士/国際行政書士事務所
代表 五十嵐 博幸(Igarashi Hiroyuki)

 

 

 

 

◆定額残業代(みなし残業代)とは
定額残業代とは時間外労働に対する賃金として予め一定の額を定めておいて、その定めた金額の範囲内であれば定額を支払うというものです。
ここで問題になるのが残業代として何時間分で幾らが支払われることになっているかという点です。実際に定額残業代を導入している企業では、営業手当や役職勤務手当てなどの様に時間外労働の賃金であることが名目上分かりづらく一律的に支払われているケースが散見されます。このような場合、何時間働いても一定額しか残業代が支払われないことも多くトラブルの原因となります。

◆定額残業代の要件とは
では、定額残業代を導入し正しく運用していくための要件を説明します。

≪明確区分性≫
通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外の割増賃金に当たる部分とを判別することができるようになっていなければなりません
労働者が自分の給料が正しく計算されているかを確認できるようになっていることと理解しても良いでしょう。固定で支払われる基本給と時間外労働をした割増賃金(時間数、時間単価、)が、労働契約書、就業規則または給与明細書などによって明確に区分されていないといけません。厚生労働省で示された注意点を以下に挙げます。

~基監発0731 第1 号 平成29 年7 月31 日 厚生労働省労働基準局監督課~

基本賃金等の金額が労働者に明示されていることを前提に、例えぱ、時間外労働、休日労働及び深夜労働に対する割増賃金に当たる部分について、相当する時間外労働等の時間数又は金額を書面等で明示するなどして、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを明確に区別できるようにしているか確認すること。

≪対価性≫
会社は残業代の支払いについて定額残業代として支払っていることが当然必要となります。
時間外労働に従事した従業員だけを対象に支給され、時間外労働の対価以外に合理的な支給根拠(支給の趣旨・目的)がないこと。例えば営業手当を定額残業代としながら、営業手当の中に割増賃金のほかにインセンティブ等を含んでいたり、また、会社の業績によって手当の額が変動する仕組みとなっている場合には、時間外労働の対価として支払われていたとは認められない可能性が高くなります。

≪差額支払い合意≫
労働基準法第三十七条では『使用者が労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない・・・』と規定されているため改めて合意が必要なものではありませんが、判例では一定時間を超えて残業(定額残業代の金額を超える残業)が行われた場合には別途上乗せして残業手当を支給する旨もあらかじめ明らかにされていなければならないという補足意見が付された経緯もあるため、実残業代が定額残業代を超えた分の差額支払いについても労働契約書、就業規則等に記載しておくほうが安全といえるでしょう。

≪定額残業代の時間設定≫
給与の総額は維持しつつ基本給を低く抑え、定額残業代部分を極端に高くすることにより残業時間が増加しても残業代を払わないで済むといったような場合など、労働者に不利な条件となると判断された定額残業代は以下に挙げる通り無効となった判例があります。

【 判 例  】
穂波事件(岐阜地裁平成27年10月22日判決)
10万円,83時間相当であるみなし残業手当について,83時間の残業は,36協定で定めることができる労働時間の上限の月45時間の2倍近い長時間であり,相当な長時間労働を強いる根拠となるものであって,公序良俗に違反するといわざるを得ず,管理者手当(管理固定残業)は時間外労働に対する手当として扱うべきではなく,月によって定められた賃金として時間外労働等の割増賃金の基礎とすべきであるとしました。

ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル事件(札幌高裁平成24年10月19日判決)
使用者が基本給とは別に支給されていた定額の職務手当が95時間分の時間外賃金であると主張したのに対し,職務手当の受給を合意した労働者が95時間の時間外労働義務を負うことになり,このような長時間の時間外労働を義務付けることは,労働基準法36条の規定を無意味なものとするばかりでなく,安全配慮義務に反し,公序良俗に反する恐れさえあるとして,職務手当は労働基準法36条の上限として周知されている月45時間分の通常残業の対価として合意され,支払われたものと認めるのが相当として,月45時間を超える時間外労働時間及び深夜労働時間につき,残業代の支払を命じました。

マーケティングインフォメーションコミュニティ事件(東京高裁平成26年11月26日判決,横浜地裁平成26年4月30日判決)
おおむね100時間に相当する時間外手当について,割増賃金に相当する部分とそれ以外の部分についての区別が明確となっていないことのほか,36協定の延長限度額に関する基準において月45時間が労働時間の上限と定められていることに照らし,「100時間という長時間の時間外労働を恒常的に行わせることが上記法令の趣旨に反するものである」こと等を理由として,営業手当の支払が割増賃金の支払であることを否定しました。

このようなことを考慮しますと、定額残業代の時間数の設定に関しては月間時間外労働45時間分を上限として制度設計を行うことが前提条件となるでしょう。

定額残業代の設計に際し、実際に対象従業員群の一ヶ月あたりの時間外労働時間数を調査し、その結果に基づき殆どの従業員が定額残業代の範囲内であるといった時間枠(月間時間外労働45時間以内)の設定を行ったような場合には前述の≪対価性≫を補強する要素となり得るでしょう。
尚、定額額残業代の規程がされた就業規則が広く周知されている必要があることは云うまでもありませ。

次回は、「労働組合とは」と題してお送りいたします。

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この記事の筆者:デントプレス

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